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カナヘビ

小学校4年生の時、クラスの男子の間でカナヘビ捕りが流行っていた。小学生にとって、カナヘビは飼育が比較的簡単で、昆虫よりもなんとなく恰好良く見えたのだと思う。教室のロッカーの上には、自分の捕まえたカナヘビを自慢したくて仕方がない男子達の虫かごが並んでいた。昼休みになると、彼らは校舎の裏の繁みに行って蜘蛛を捕まえ、それをカナヘビのいる虫かごに放り込む。動く蜘蛛を素早い動きで捕食するカナヘビの様子を、皆で見て楽しむのだ。複数の小学生から、まじまじと見られながらの食事を強いられていたカナヘビの立場を今想像すると、ぞっとする。ごめんよ、カナヘビさん。

ある時、クラスの男子数人のカナヘビを捕まえに行くのに同行させてもらった。自転車をしばらく走らせ、到着したのは学区外の中学校だった。カナヘビ捕獲隊隊長のウエマツくん曰く、ここは知る人ぞ知る絶好のカナヘビ捕獲スポットであるとのことだったので、一行の期待は高まった。心臓をどきどきさせながら、えんもゆかりもない中学校に侵入し、枯葉を掻き分けて捜索をすると、本当にあっさりターゲットが見つかった。隊長を信じて良かった......。信じられるものを得た隊員は、夢中になって枯葉を掻き分けた。
しばらくの間捜索を続け、満足して帰る雰囲気になった頃、隊長が1匹いらないから僕にくれると言った。飼うつもりはなかったから、虫かごは持ってきていなかったけれど、もらえるとなるとなんだか欲しい気もしてきたので、とりあえず、仮のかごにお菓子の箱を(これも隊長に)もらって、それに入れて持ち帰った。箱を受け取る際、隊長から「あとは自分で工夫して」との言葉をもらったが、工夫とはどういうことなのか、新米の僕にはよくわからなかった。
使っていない虫かごが無いか、家に着いてから探してみたけれど、全部カブトムシを飼うのに使われていた。新しく虫かごを買ってくれるように頼むのは憚られたので、とりあえずお菓子の箱のままで飼うことにした。しかし、夜になる頃に、お菓子の箱で飼っていては、カナヘビの様子が少しも見られないことに気が付いた。これではちっとも面白くないし、いつまでも狭い中に閉じ込めておくのはかわいそうだと思ったので、一旦床の上に放してやったところ、一目散に駆け出し、ベッドの下に這入り込んでしまった。懐中電灯で照らしてみたところ、埃の中に姿が見られたので、それで安心して、そのまま寝てしまった。
それから2、3日の間は、時々部屋の中でカナヘビを見かけることがあったけれど、すぐに見なくなった。カナヘビを箱から逃がしてから、カブトムシを飼うのにも何故か飽きてしまって、全て友達にあげてしまった。かごの中の生物を見ているときよりも、ベッドの下に潜んでいるカナヘビを見た時の方が楽しかったせいかもしれない。

今でもベッドの下を見ると、カナヘビを目で探してしまうことがある。