メキシコ1日目

大学を卒業する

 学生生活がついに終わる。6年間も通った割には、今のところは感慨と呼べるようなものも、ここに書いておきたいことも特に無いと感じる。あるいはもう全て書いたのかもしれない。また他の原因として、大きく環境が変わるタイミングだと認識している一方で、既に学生生活を経てこれからの人生へとなめらかに意識が向いていったことで、案外一般に考えられているほど節目だとは感じていないということも挙げられるかもしれない。そこで一先ずは、書くことが特に無いということだけ書いておくことにする。

 さて、話は変わるけれど、学生最後となるこのタイミングで、今まで一度も行ったことのない海外に行ってみようと思う。行き先は一年ほど前から決めていて、メキシコだ。この国を選んだのは、いつだったか、たまたまネットでやった自分に合う都市診断なるもので「メキシコシティ」と診断されたからだ。ふざけた理由だけれど、旅行をするのにふざけていない理由があったことは今まで無いので、これで良い。気候的には好きな部類だと想像しているし*1、きっとこのような理由でもなければ行かなかっただろう。元々海外にしようと漠然と思っていただけで、あるときにはそれはエジンバラであったし、ニュージーランドでも、アイスランドでもあった。本当のところ、別にどこへも行きたいとは思っていなかった。疲れるし。それがどこであっても、行きたいと思う特別の理由なんぞないけれど、理由がないと旅行をしてはいけない決まりもないだろう。行ってみて楽しかったらそれが行きたかった理由になるのだと思う。そういうわけで、旅費は4月の自分に、理由は旅行中の自分に任せることにして、メキシコに行って来ようと思う。

 

当日

 成田までの電車の中、花粉の飛散量がこれから数日間特別多くなるといった旨のツイートを見て、ちょうどうまく逃げられる格好だというようなことをぼんやり考えていた。しかし神奈川から成田までの2時間強という時間は逃亡するおさかなに追い打ちをお見舞いするのに十分だったようで、空港に着いた時にはティッシュを手放せなくなっていた。ヲヲン。せめて向こうに渡ってからはこんな思いをせずに過ごせるといいが......。

 メキシコまでは日本国内から直行便が出ていて、今回は16:40成田発、同日13:55メキシコシティ着のフライトを利用した。ちょうど夜に眠り現地で昼を迎える形なので、時差ボケの心配も無い良いフライトだと思う。飛行機に搭乗して自分の座席を確認すると、端だと思っていたのが中央の席で、少し残念な気がした。そう思いながらも出発の時間までしばらく待っていると、通路側の席が空席であることがわかり、結局当初の想定よりも好ましい状況となった。いつものことだけれど、運がついていると思った。
 飛行機が加速を始める。他の乗り物では感じないような大きさの力を背中に感じながら離陸する。楽しい。
 機内食の選択をするタイミングで、隣の乗客に対する乗務員の英語がイマイチ聞き取れず、こんなことで大丈夫なのかと先が思いやられるような気持ちになったが、そのあとに私に対して発せられた日本語の方もほとんど聞き取れないことに気づくと安心した。単に気圧による耳の具合の問題だった。食事は十分な量で、味は少し濃かったように思う。上空では気圧の関係で味の感じ方が変わるため、機内食は濃いめの味付けにしてあるというようなことを昔テレビで見たことがあったので、それかと思った。しかし結局濃いと感じているので、そのあたりの調整は難しいらしい。
 機内食を食べ終える頃には窓の外はもう夜だった。機体の進行方向と地球の自転方向が一致しているので、夜が来るのが早い。それから少しすると消灯時間になった。本を読んでいたので明かりが欲しかったけれど、頭上のライトを点けるのも憚られるので、モニターの明かりを最大にしてしばらくコソコソするような姿勢で読んだ。

*1:寒帯や乾燥帯の風景に魅力を感じる