西日本横断2日目

羽咋の家には3泊するが、周辺には田畑しかなく、最寄り駅までも10km以上の距離があるため、自分ではどこにも出かけようがない。とは言っても、元々出かける気はなかったので、行きたいところはあるかという、前日の夕食の時間にされた問いに対しては、特にないと応えた。
旅行2日目と3日目は、近所をちょっと散歩して、後は家でゴロゴロしていればいいかと思っていたんだけれど、この日は祖母が金沢に病院に行く用事があるというので、検査をしている間、金沢の街を見て回ったらどうだと提案された。せっかくそう言ってくれているのだし、車に乗るのは好きだから、ついていくことにした。

助手席は眺めがいいし、それでいて自分は運転していないのだから贅沢だと思う。無料化されたのと里山海道を走りながら、金沢に着いてからの話をした。

兼六園に行くんはどう?」
兼六園には前に家族で行ったことがあるよ」
「1人ではつまらんかもしれんね」
「そうかもしれないね」
「そうだ、21世紀美術館がいいよ」
「何があるの?」
「わからん」
「それはいいね」
「うん」
21世紀美術館に行こう」

大学病院の傍まで来ると、駐車場が工事中で、外の道路まで車の列が伸びていた。先に降りていてもいいと言われたけれど、外は小雨がぱらついているし、シートに座っているのは楽なので、しばらくそのまま過ごした。20分くらい経つと、雨が止んだように見えたので、車から降りて兼六園や美術館のある方へ向かった。
市街は天気のせいか自転車が少なく、歩きやすかった。兼六園の傍を通り、美術館の前まで来たところで、入場するか迷いだした。美術館には展示品がたくさんあるんだろうけど、人に見てもらうために造られた品は、きちんと見なければいけない気がして気が重い。それに、旅行中だからといって、普段興味を持たないような場所に行ったり見たりしてもあまり楽しめないことは、これまでの経験から分かっていた。だからと言って、入場をやめて街をぶらぶらしているだけで楽しめる保証は勿論無いけれど、わざわざお金を払って有名な観光地に行ってつまらないよりはずっといい。期待は先入観と同じで、できるだけ持たない方が賢明だと思うから、人が大勢集まる観光地などの、楽しいと評判の場所は注意が必要である。

美術館の見学をやめて、世界で2番目に美味しいメロンパンを食べたりしながら1時間ほど街を歩くと満足したので、病院に戻ることにした。再び小雨が降り出してきたが、できるだけ折り畳み傘は使わずにいたい*1ので、雨を頭に受けながら歩いた。僕が到着したときに丁度検査が終わり、車に乗って病院を出た。

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世界で2番目に美味しいメロンパンアイス。
パンが焼きたてで美味しかった。

金沢を出ると空は晴れ上がっており、進路の前方には虹が出ていた。虹を見るのは久しぶりで、ちょっとテンションが上がった。原理を知らなかった時代の人々の目にはさぞ神秘的に映ったのだろうなと考えたりした。

「虹が2重にかかると、片方は色の順番が反転するんだって」
「へえ」
「こないだTVでやってた。光の屈折が~言うてたけど、ようわからんかった」
「ははは」
「石川を出てからはどうするの?」
「とりあえず鳥取で砂丘に行くのと、香川に行くからうどんを食べようとは思ってるよ」
「あそこへ行ったらうどん食べないとね」
「だよね」
「私はうどん嫌いだけど」
「うどんが嫌い?」
「そう。うどんが嫌いな人なんて私しかいないだろうね」
「そうだね」

15時ごろに帰宅し、前日に不在着信のあったアルバイトの応募先へ折り返しの電話を掛けた。2月の初めにアルバイト先が無くなり、お金が足りない状態で今回の旅行を決行したため、4月の口座振替日までにお金を調達しないといけない。まあ運が良いので何とかなると思う。

面接の日取りを決め終えて時間ができたので、散歩に出かけた。

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のん。

昔は飼い犬と一緒に散歩をしていたけれど、今はもういない。1人ではあまり楽しくなくて、すこし寂しい気持ちになった。

*1:濡れた傘をバッグにしまうのがいやだ