読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

西日本横断3日目

前日には用事のあった祖父もこの日は家に居たため、3人でどこかへ出掛けようという話になった。乗り物に乗ることによって、自分は何もしなくても移動ができてしまうばかりでなく、人から誘われることで、自発的な外出の意志すらなくても出掛けられてしまうのだから、すごいことになったと思った。
2人の提案で白川郷の合掌集落へ行くことになり、ぺらっぺらの寝間着*1から、外出着に着替えた。白川郷には電車では行きづらいので、今回行くことになったのはラッキーだと言える。富山から多少雪が深くなってきて、内陸部の岐阜にまで入ると気温は0度にまで下がり、まだまだ春は遠い様子だった。
前に1度来たことがあると言いながらも、駐車場の場所を探して同じ道を行ったり来たりして、やっとのことで村営の駐車場に車を駐められた。

f:id:pDEsym:20160313123945j:plain

駐車場から橋を渡り、合掌造りの住宅のある集落へ向かう。

アジアからの観光客がやたら多くて、中国語やら韓国語やらがあちこちから聞こえてきた。向かい側へ渡るとそこらに茅葺き屋根の建物があり、近くで見ると、その屋根の厚みと建物の高さに迫力があって、中がどうなっているのか気になった。建物を見ながら歩いていると、その傍に必ず「放水銃」と書かれた箱があるので、何かと尋ねると、11月ごろに集落で一斉にここから放水をするのだという。前に夫婦で訪れたのが丁度その11月で、丘の上の展望台から一斉放水を見ることができ、とても綺麗で感動したらしい。水が吹き上がる様子の何が綺麗なのか想像ができないし、その時の写真を見せてもらってもいまいち伝わらなかったので、実際に見た人だけがわかるものなのだと思って、少し羨ましいと思った。
白川郷最大級の家屋が一般に公開されているというから、寄ってみることにした。建物は5階建てで、1階が生活の場所、2階(というか階段の途中のスペース?)が使用人の寝床、3、4階には生活の道具や農作業の器具が展示されていた*2。作業道具は見ても僕にはよくわからなかったけれど、祖父母が楽しそうに見ていたので良かった。中は丁寧に保存されていて、古民家特有の、立派なお城などとは違った味のある粗さがあって、見ていて面白い。建物の見学を終えたので、集落を出ることにした。

「ああいう風なのはいいね」
「どういうこと?」
「お土産売ったりしないで、ああやって玄関で座ってるだけでも、入場料300円なら、入ってもいいかなってなるやろ?」
「確かにね。年中人は来るだろうし」
「そうそう......あ、甘酒があるよ。暖まりそうやし甘酒飲もうか」
「お酒は飲めないんだよ」
「甘酒はアルコール入ってないよ」
「そうなの?」
「甘酒はアルコール入っとらんよね、おとうさん」
「うん?ああ...」

少し不安だったのでWikipediaを見たところ、アルコールはほとんど入っていないと書かれていたので、3人で甘酒を飲んだ。不自然に感じられる甘い香りがして、あまり美味しいとは思えなかった。

僕がお昼は蕎麦が食べたいと言ったら、前に行って美味しかったお店があると言って、すぐに車を発進させた。白川郷からさらに南下し、荘川IC近くの蕎麦屋に到着した。駐車場にあった大きな水車は、冬季なので動いておらず、動いているときには周りに人が集まってぼーっと見ているのだと聞いて、面白そうだと思った。
お店に入り、祖父母は温かいお蕎麦、僕はざる蕎麦を注文した。

「前にこのお店に来たのも、さっきの白川郷を見に来た時だったの?」
「ううん、違う。えっと、どこやったっけ、おとうさん」
「ん?うーん...」
「あ、そうだ、ひるがの高原だ」
「ひるがの高原?」
「スキー場のとこにゆりがたくさん植えてあって、リフトに乗って上から眺められるようになってるの。すっごい綺麗だったよ」
「ふうん、いいねえ。ゆりかぁ」
「ゆりだと上まで綺麗に咲くんだって」
「うん?」
「桜とかだと、高さによって咲き方が疎らになってしまうけど、ゆりだと、そういうことが無いんだって」
「そうなんだぁ」

店内は空いていたので、お蕎麦はそれなりに早く運ばれてきた。ざる蕎麦は見た目では美味しいのかどうかほとんどわからない所が良い。荘川はお蕎麦が有名らしくて、中々美味しかった。

家に帰ってからは、我が家にはない炬燵でのんびり過ごし、今回の旅行中にこの家で過ごす最後の日を反芻した。

*1:荷物の軽量化のため、上は甚平、下はヒートテックという阿呆みたいな恰好だ

*2:5階は公開されていなかった