西日本横断1日目

4月からは4年生だ。院試やらなんやらで、今までのようにぼんやりとはしていられないかもしれない。するけど。ここらで1人でする旅行の1つの区切りとして、小学校の修学旅行で京都に訪れて以来行っていなかった、西日本方面へ行ってみようと思う。

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前の記事でも触れた上図の色付きの線上を移動し、石川にある母の実家で3泊、大阪、岡山、松山・小倉フェリー、熊本、鹿児島で1泊する。鳥取で砂丘を見ることだけは決まっているが、他は着いてから考える。

 

2月29日の夜、翌日は早起きだから早く寝ようと、頭の片隅で考えてはいたものの、結局布団に入ったのはいつも通り、1時を回ってからだった。寝付きが悪いのもいつも通りで、眠れない夜には誰もが経験するであろう、残りどれだけ寝る時間があるかの計算をし始め、少しもリラックスできる気配がなくなってきたところで、いよいよ4時20分にセットしていたアラームが鳴った。どうせこの日1日、集中力を要求されるような事はないし、結果的にアラームが鳴った後にきちんと起きているんだから良しとした。
のろのろ準備をしていたら、出発の時間ぎりぎりになってしまったので、仕方なく駅までは自転車に乗って行くことにした。外はまだ暗く、寒さで体が震え、寝不足で少し目が回っていた。欠伸をしながら入った最寄り駅の窓口には、青森の時と同様に駅員がいなかったので、入鋏印は八王子駅で押してもらった。

大月行の中央線に乗り、相模湖に差し掛かった辺りで、山の稜線から陽の光が漏れ出してきた。赤い山際から、藍色をした未だ夜の空に掛けては薄黄緑色にぼやけていて、夜なのか朝なのかわからない、夢のような色をしている。陽が山の陰を出入りするせいで、車内は朝と夜とを行ったり来たりした。
大月で乗り換えた中央本線クロスシートで、発停車の際の振動が背中に伝わり、グングン進んでいく感じがする。陽はまだ低いから、周りの照らされた山々は赤色で、夕暮れと区別がつかない。時計を使わずに朝焼け時(こんな言葉あるのか)と夕暮れ時とを区別するにはどうしたらいいか、何度か考えたことがあった。1つは、しばらく何もせずに周りを見ていればいい。暗くなっていくか明るくなっていくかで判別ができる。そして今回思いついたのが、音を聞くこと。朝は眠っている生物が多いから、夕暮れに比べて恐らく静かだと思う。
甲府まで来ると段々雪が見られるようになってきて、松本で大糸線に乗り換えてからは、ちらちら雪が舞っていた。外はだいぶ寒いようで、震えながら手元のスマートフォンを見つめる乗客が、きっちり並んでロングシートに座っている様子は、これからどこかへ連れていかれる捕虜のように見えた。信濃木崎を過ぎてから、一面雪の山間部に入り、大糸線木崎湖と青木湖の畔を通過し、姫川に沿って内陸と沿岸を結ぶ。

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木崎湖。旅行中はいつも天気が良い。

電車の側方に見える木々の大半がスギである事に気付いてぞっとしたり、ウトウトしたりしているうちに、終着駅である糸魚川駅に到着した。

糸魚川からは、新幹線の開業で第三セクターに移行した、えちごトキめき鉄道(かわいい)と、あいの風とやま鉄道(かわいくない)を乗り継ぐ。この区間は18きっぷの利用ができないが、日本海沿いを走る好路線なので気にならない。

糸魚川駅での乗り換え時間は3分と短い。きちんと券売機で切符を買って再入場するか、車掌に伝えて車内で買うか、ぼんやり考えながら歩いていたら、電車が行ってしまった。この先での乗り換えの時間を考えると、次に乗る電車は2時間半後の出発になる。外は雪がたくさん降っていて出たくなかったから、駅の中で昼食にすることにした。喫茶店を見つけ、店先のメニューに「ナポリタン」の文字を見たかと思うと、店内に身体が吸い込まれた。

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2016年13食目のナポリタン。
味はミートソースに近い。サラダに入っているトマトがあまり美味しくなかった。

店を出てからは建物内のベンチで何もせずに過ごし、定刻に来た電車に乗り込んだ。シートはほぼすべてクロスシートで、内装も外装も可愛い。日本海が見える進行方向右側の座席に座り、外を眺めた。1年ぶりに見た日本海は緑色をしていて、暖かそうに見えた。しばらく乗っていると、地方の路線は駅の間隔が広いせいで、車内アナウンスの無い時間が首都圏の電車と比べて長く、これがのんびりした気持ちになれる要因の1つなのではないかとひらめいた。クロスシートや車窓風景の事はわざわざ言うまでもない。
津幡駅七尾線に乗り換える頃には外は暗く、羽咋駅までお迎えをお願いしていた祖父母には少し悪い気がした。学校や職場からの帰宅の時間なのか、少々混雑した電車に乗り込んでしばらくすると、電源の切り替わりとやらで、少しの間電気が消えるとのアナウンスが流れた。それは楽しそうだと思ってわくわくしていると、灯りが消え、電車内と外との境界が曖昧になった。車内が外と同じ明るさになった状態は非日常的で、数10秒後に元通り電気が点いた時には、消えっぱなしだったら良かったのになぁと感じた。

羽咋駅の改札をくぐると、高校1年生の夏休み振りに会う祖父母が迎えてくれた。今日までの間にお互いが出掛けた場所や、弟たちの話をした。懐かしい道を通り、度々ストリートビューで擬似散歩をしては、また行きたいと思っていた家に、神奈川の自宅を出発した15時間後、帰宅した。