北海道

旅行者は旅行を計画するとき、どのような目的、嗜好でその場所を選ぶのだろう。複数人での旅行では、案外場所は二次的なものであったりして、実際には、勉強会と銘打った集まりが、単に大真面目に勉強をするのではなく、試験に対する不安、不満を語り合う事こそを真の目的としていると各々が心中で了解しているように、仲間と楽しく非日常を過ごす事が肝要である場合が多いと思う。それに対して、一人での旅行では自分自身を納得させるだけの目的が必要になる。

先日9月2日から5日までの期間、北海道に旅行に行った。道内の移動には電車を利用し、本州からは飛行機を利用した。夏だったから軽装で、荷物が今までで一番軽かったと思う。ランドセルで足りたんじゃないかな。男性は楽だ。
北海道を選んだのは、『人生で一度は行かないと』と漠然と考えていたのと、それだけでも十分に目的とし得るほどの美味しい食べ物のイメージがあったため。ただ、何よりもこの旅行に求めていたのは、自分が旅行に対して何を求めているのかを自覚する事だった。今まででも多少の心当たりはあった。家、学校、アルバイトといった諸々の関係から一時だけでも外れて、社交性から身を守ったような気分に浸るため。心奪われる美しい風景を見るため。その土地の美味しい食べ物を食べるため。これらは確かに実感を伴っているけど、とてもこれだけでは説明し足りない。今回の旅行ではそれを探し、見つけることができたと思う。

9月2日は関東は曇りで札幌は大雨。行きの空港内では微味なたこ焼きを食べながら時間をつぶした。記憶している限りでは、飛行機は小学校高学年の時に乗ったのが最後だったため、今回の楽しみの一つでもあった。離陸する際の浮遊感には乗り物好きには心躍るものがあったし、窓から見る雲海と太陽の光からは、雲の上は常に晴れているという当たり前の知識を目で味わうことができた。ただ、2時間程度の雲の目隠しをされた後に、突然北海道の大地が現れるのは少しあっけないと感じた。

新千歳空港から40分弱で札幌駅に到着し、駅を出て最初に思ったのは、かなり都会(主観)であるという事。適当に外を歩いてからショッピングビルの中のスープカレー屋で昼食を食べていたら、結構いい時間になってしまって、雨の中バス停まで走ることになった。雨の中を走りながら、青森での十二湖駅から青池までの道を思い出しながら苦笑していたんだけど、健闘も虚しくバスには間に合わなかった時には、流石に反省した。本来は札幌からバスに乗って石狩まで行き、はまなすの丘公園で散歩をして石狩灯台を見学するつもりだった。それでも今回は天候が悪かったから、ある程度諦めがついた。

夕方になっても雨はやみそうになかったので、早めにカプセルを予約していたスパにチェックインしてお風呂に入ることにした。ロッカーに荷物を預けてからすぐに浴場に行くと、その内容の充実具合に驚いた。大浴槽、薬湯、ジェットバス、水風呂、檜露天風呂に加えて、塩サウナ、備長炭サウナ、ロウリュウサウナの3種類のサウナがあって、かなりテンションが上がった。塩サウナは水蒸気でかなり視界の悪くなっている部屋の中に塩の盛られた壺がいくつか置いてあって、体に塗りつけながら入るのだという。皮膚に塗りつけることで、浸透圧で発汗を促し、開いた毛穴を塩で洗浄するといったようなことが書かれていた。室温がそれほど高くなかった(と感じた)ので、長く入れそうだったけど、テレビが無かったのでササッと切り上げた。塩サウナの後に水風呂に入ったときに、小学校の理科の塩化ナトリウムの再結晶の実験を思い出した。その他のサウナと水風呂の交互浴を繰り返していたら3時間弱も経っていたので、後ろ髪を引かれながらもバスの失敗は繰り返すまいとスパを一旦後にし、ジンギスカンのお店に向かった。
札幌のジンギスカンのお店とだけあって、並んでいる客も多かった。お腹が空いていたので、ジンギスカン2人前、チャンジャ、大盛りご飯2杯も食べてしまった。自分の中でジンギスカン鍋にはもやしが盛られるイメージだったんだけど、このお店ではタマネギだった。本当に美味しかった。食後はスパに戻り、カプセルに入った。ゆっくりお風呂に浸かれて2000円代で泊まれるならカプセルホテルも悪くないな、と思った。

1日目終わり